今春、中学校の教育が大きく変わりました。新・学習指導要領の本格的な実施、教科書のページ増や内容の改訂…。何より、従来と「学び方」が大きく変わりました。それに伴い、今後「成績評価」の内容も大きく変わっていきます。今回は、今春から始まった中学校教育の簡単な変更点と、成績表の「観点別評価」で新しくキーワードになる“メタ認知能力”について解説します。
中学生の教科書、またページ数が増えて重くなったような…。特に英語が難しくなったと聞きました。
確かに英語は、一番変わりましたね。文法的にも単語的にも、高校内容の一部が下の学年に降りてボリュームが増しました。他の教科も、内容の充実に伴って厚くなっています。それ以上に大きな変化といえば、「学び方」自体が変わったということでしょう。一連の教育改革の柱である「思考力・表現力・判断力」が身につくよう、掲載資料を増やし、対話やプレゼンテーションを促すなど、さまざまな工夫がされています。
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新・学習指導要領の実施、教科書ページ増…春から変わった中学校教育とは?
中学校で一番変わったのは英語です。高校卒業段階での到達度を引き上げたため、内容も増化+難化しました。とはいえ、教科化された小学校英語とうまく連動できるよう、中1前半までは小学校内容の復習を行う教科書が主流です。全体として、音から文字へ、表現から文法へと、中学英語ならではの学習にスムーズに移行できるよう小学校から高校までを見据えたカリキュラムが設定されました。
さらに、学び方も変わります。全ての教科で、「思考力・表現力・判断力」を身につける工夫が見られます。単元の初めに問題意識を持ち、自ら学べるようになる工夫や、学んだことについて話し合いやプレゼンテーションを行って、より学習を深められるような仕掛けがされています。中には、「答えは何だろう?」と大人でも戸惑うような問いかけも設定されています。
教科書が変わったということは、成績表や学習評価も変わるってことですよね?
はい。「自分から学ぶ=主体的に学習に取り組む態度」が評価されるようになります。お子さんたちの成績表は「観点別評価」によって付けられていますが、その中に今まであった「意欲・関心・態度」が無くなり、代わりにこの「主体的に学習に取り組む態度」が評価されるようになります。この観点に深く関わるのが、“メタ認知能力”なんですよ!
成績評価も変わる!“メタ認知能力”が試される「主体的に学習に取り組む態度」って?
国立教育政策研究所の『学習評価のハンドブック』によると、この観点では「自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているか」を評価するとしています。その評価の方法として、
①粘り強く取り組んでいるか
②自らの学習を調整しようとしているか
を挙げています。要するに、自分は何がわかっていないか?その理由は何か?どうすれば分かるようになるか?などを「認識し、行動し、改善する過程やその力」を評価する、と言っているのです。こうした「物事を客観的に捉えて改善する力」が“メタ認知能力”です。
これまでの「関心・意欲・態度」は、能力としては捉えにくいものでした。(そもそも、関心や意欲は評価するものではなく、教える側が引き出すべきものとも言えます)しかし、新たな観点では、まさに一人ひとりの“メタ認知能力”がクローズアップされ、資質・能力の評価に変わっていきます。
従来の「意欲・関心・態度」は確かにわかりづらい部分はありましたよね。
えーと…、その“メタ認知能力“というものを鍛えるには、どうしたらいいでしょうか?
まずはお子さん自身に、これまでの学習を自己評価させてみましょう。さなるで普段やっていることは、例えば、スケジュール帳を使って学習を自分で管理したり、テスト結果を振り返って次回の目標を立てたりなど、これも立派な“メタ認知能力“を向上させるトレーニングなのです。
ご家庭でお子さんが効率の良い学習管理を一人で行うのは、最初は難しいかもしれませんが、一緒に定期テストまでの学習計画を立て、興味・関心のある分野を体験し、調べるサポートを家庭でしてみるなど、意識を変えるだけでプラスになりますよ!
土台づくりはやっぱり家庭!自分でスケジュールを立て、実行&検証する習慣づくりを!
新しい教科書では、実社会や日常生活の中で豊かな語彙や論理的に物事を考える習慣、「思考力・判断力・表現力」を鍛える工夫が促されています。子どもたちは家庭で日常生活の大半を過ごすわけですから、家庭でのトライ&エラーの積み重ねは、新しい学びのヒントになるはずです。
この経験は、何も学校の教科学習の範囲に留まるものではありません。今はコロナ禍で難しい部分もありますが、子どもたちが主体となって休日の予定を立てて実行・検証したり、新聞やニュースを見て話し合ったりするなどもおすすめです。
一方で、身につける力が変化しているといっても、知識の習得が必要なくなるわけではありません。
知識を土台に考えることで、比較したり、共通点を見つけたりといったメタ認知能力を生かした新たな発見に挑むことができるのです。学び残しやつまずきがないよう、家庭で見守ってあげることも、今まで以上に大切になるでしょう。
模試や塾なども上手に活用し、子どもを中心とした見守りの輪の中で、次世代を生きる子どもたちの能力をしっかり高めてあげたいですね。