“格に合わせる”のが合格
合格は「格を合わせる」と書きます。自分が行きたい高校や大学には、その学校の「格」があります。その志望校の「格」に合わせる戦いが受験です。
受験はまさに、「自分VS高校・大学」の一騎打ち。それは、「前回の期末テストよりも、総合得点がアップした」という個人の実力の伸び幅や、「クラス順位がトップだった」という相対的な競争では測れない戦いであり、志望校の合格ラインとの格闘技なのです。
したがって子どもたちはまず、その学校の「格」を知る必要があります。受験科目やレベルはもちろん、校風や何を学べるかなどの学校の「格」の情報を調べ、それに見合う自分になろうとする。それが受験勉強なのです。
合格への道、受験の3段階
受験は3つの段階をクリアして合格につながります。1段階目は、自分で目標や夢(志望校)を見つけること。2段階目は、自分が決めた志望校の「格」に合うように努力すること。3段階目は、合格という受験の結果です。
1段階目は、いろいろな人の意見を聞いたり相談したりすることになります。「自分の受験だ。自分の目標だ」という確信を得るために、納得するまで情報を収集して検討しましょう。
2段階目は、受験生にとって最も時間がかかり、精神的にもしんどくなってくる部分です。しかし、ここで悩んだり苦労したりした経験が、世の中に出たときに最も役に立つ力になるため、踏ん張りどころでもあります。
将来、「この会社に入りたい」「こういう仕事をしたい」と思ったとき、目指すものと自分の実力との間に隔たりがあれば、自分を変えていかなければなりません。その目標に到達するまで、妥協することなく突き進むことのできる力を養っておく必要があります。また、自分の目標達成のためには、それ以外の欲望を自分の意志で抑制しなければなりません。遊びたいゲームや見たいテレビを我慢して、やるべき勉強をするには、かなりのセルフコントロールが必要になります。
「志望校を合格できる学校に変える」のではなく、「志望校に合わせて自分を変えていく」。これこそが受験の醍醐味であり、ここでの努力して壁を乗り越えた経験が、後に人生における大きな財産になってきます。努力した結果、3段階目に達した~合格を手にした~時の喜びは、何物にも代えがたいものになることでしょう。
未来につながる視点を持って
しかし、受験が近づくと、どうしても目先の「合格・不合格」にとらわれてしまい、自分を変えるのではなく、目標であったはずの学校を変えてしまう生徒がいます。つらく苦しいことも多い受験ですが、未来につながる視点を持つと、受験生が成長できる貴重な機会として考えることができます。
一例ですが、現代の日本においては、中学生・高校生たちは温室のような環境の中で育ってきており、そのほとんどが戦いや競争とは無縁の学生生活を送っています。しかし、それを終えた途端、社会の荒波は容赦なく彼らを襲います。それらに打ち勝つためには、生きるための基礎的な力を身につけ、困難に負けない強い精神力を培うための訓練が必要です。「勉強」や「受験」は、まさしく厳しい社会を生き抜くためのトレーニングなのです。
人生の通過点だからこそ
そういう視点で見ると、学生時代に経験する「受験」は、人生のゴールではなく、あくまで通過点だということがわかります。1段階目の目標を立てられること自体が素晴らしいことですし、2段階目の最後の1分1秒まで戦うということは、大人でもなかなかできることではありません。何かに挑戦し、それに向けて努力し続けたという事実は、たとえ結果が「不合格」だったとしても、それを補ってあまりある“価値”があります。
保護者の方は、自分を変えてでも目標に向かって頑張る子どもたちに、“かっこいい”と言い続けてあげてください。そしてつらくて苦しい受験から逃げずに、挑ませてあげてください。受験の後も人生は続き、その経験は必ず将来に生きてきます。「やるからには本気でやりなさい!」と熱く子どもたちを応援してあげられる、“最高のサポーター”であってほしいと思います。
Adviser
吉留 博巳(佐鳴予備校教師)