親こそが主体的な意識を持って、子どもに関わってほしい。
──子育てコーチングスクールには、いろんな親御さんが参加されていると思います。最近の子育ての様子を見ていて、気になる点はありますでしょうか?
近年、教育を取り巻く環境が変化していて、「子どもの主体性を育むこと」が重要視されています。もちろんとても大切なことなのですが、「主体性」のあいまいな理解によって親御さんが行動を起こしづらくなっているのを感じます。「(子どもの状況を見ずして)とにかく手を出さない方がいいのよね?」「やりたくないと言うなら、やらせない方がいいのかな?」など、親が子どもに関わるのをためらったり放置してしまったり…。ただ、子どもは放っておいたら動きません。
現代の子どもたちは、まさしくデジタルネイティブ世代。身の回りには楽しいものがたくさんあり、満ち足りた毎日を過ごしています。人は楽な方向に流されますから、何かきっかけを与えられないまま放っておかれたら、わざわざ重い腰を上げて「よし!今から勉強しよう」「努力しよう!」とはならないでしょう。子どもにも自由は必要ですが、それは大人が関与せずに放置しておくこととは違います。仮にわが子が、動画やゲームにのめり込んでだらだらと不毛な時間を過ごしているなら、親がしっかり関わってうまく付き合っていけるような環境を整える必要があります。
「主体性」が育つには段階がありますので、いきなり支えていた手を離してしまうのは考えものです。子どもの「やってみよう!」という気持ちを引き出すためには、適切な言葉がけや環境づくりが欠かせませんし、親には子どもに合った手法を探しながら実践する役割があります。「子どもの主体性を育てたい」と思うのなら、親こそが子育てに対して主体的な意識を持ち、積極的に子どもとの関わり合いを深めていくべきでしょう。子どもが自ら動くための環境を整え、その中で個性を尊重する子育てが行われれば、子どもの自発的な気持ちは自然と培われていくはずです。
子どもの話を「聴く」ことで親子の絆は強くなる。
会話が生まれるコミュニケーション術
──小学生の時期は、子どもはまだまだ親との関わり合いを強く求めています。家庭で子どもと接するとき、親が特に意識すべきポイントは何でしょうか?
皆さんは日頃から、子どもの話をちゃんと聞いていますか?ついつい子どもの話を聞き流してしまったり、途中で遮って口を挟んでしまったり…、家庭でよく見られる光景です。ただ、大人が自分の話を聞いていないことを、子どもは敏感に察しています。その状況が続くと、子どもは自分から話さなくなり、ついには親の話も聞かなくなってしまいます。
子どもの話をしっかり聞くこと。それは、親子のより良い関係を作る上で最も大切な営みです。話を聞く、もっと言えば心を傾けて「聴く」。子どもは話を聞いてもらうことで、自分が大切にされていると感じ、親を信頼できる存在として認識します。
さらには、聞いてくれる人がいれば、子どもは話します。子どもは日々、学校や塾、習い事や友人関係など、家の外でいろんな経験をしながらストレスや葛藤を抱えて生きています。それらを言葉に出してアウトプットすることは、子どもが感情をコントロールしたり思考を整理したりするためにも大切なことなのです。
子どもの話をじっくり聞いて、たくさん話させてあげましょう。話を聞くときは、子どもが「聞いてくれた!」と実感できるような聞き方を心がけてください。相手のほうをしっかり向いて、うなずいたり、相づちを打ったり。こうした〝積極的傾聴〟を取り入れることで、間違いなく親子の絆は強まります。今日からぜひ実践してみてください。