二人の娘さんが東大現役合格、自らも東大大学院に進み、「教育コーチ」として保護者のエンパワメント(※)活動に力を入れている江藤さん。一人ひとりがイキイキと過ごすための家庭環境作り、親子の関係性について、さまざまなかたちで発信し続けています。子どもを取り巻く環境が変化する中、「自ら学ぶ子」「たくましく人生を歩む子」を育てるために、親にできることとは─?子育てのプロフェッショナルからのアドバイスです。
※エンパワメント:人が本来持っている力を引き出していくために、人と人との関わり(関係性)を築くこと
子育てはトライ&エラーの繰り返し。
「子どもが自ら動き出すきっかけ」を、親は真剣に考える
──江藤さん自身、二人のお子さんを東京大学現役合格へと導かれました。「自ら学ぶ子」を育てるために、親はどのように子どもに関わっていくべきでしょうか。
勉強すること、学ぶことは、本来楽しいものです。大人の世界にも多様な学びの場がありますが、「何かを知りたい」「できるようになりたい」という欲求は誰もが持っていますし、それを満たすことで大きな達成感を手にするのは素晴らしいことです。ただ、子どもの勉強となると、なぜか「しんどくて大変なもの」「つまらないもの」というレッテルが貼られ、「強制されている」というネガティブなイメージが付いてしまうこともあったりします。勉強に対するこれらの思い違いを取り除き、学ぶことの楽しさを伝えていくのが、私たち親の役割です。
ただし、いくら親が言葉で「勉強は楽しいよ」と伝えても、それがすぐに子どもに伝わるわけではありません。楽しさというのは、やはり自分自身が行動して実際に体験することで、初めて感じられるものだからです。私の場合は、娘たち二人がまだ幼い頃から、「学び」を身近に感じられるような工夫をしてきました。勉強を始めることへのハードルを下げるために、習慣化も意識しました。勉強だけでなく、スポーツでも音楽でも芸術でも、やりたいことなら、できる限り経験させたいと思っていました。何かがきっかけで「学ぶことが楽しい!」と感じられれば、子どもは自然と学習に興味を持つようになります。その時こそが、子どもが伸びるチャンスなのです。
親にできることは、子どもが「0から1に動く」きっかけを作り出すこと。「この子は何に興味があるのだろう?」「この子はどうしたら動き出すのだろう?」…ということを真剣に考えることです。子育てにおいて一番エネルギーをかけるべきポイントは、そこにあると思います。
──実際に子どもを動かすために、効果的な方法はありますでしょうか?
正直、「これをやったら、子どもが100%動く」という魔法みたいなものはありません。やり方は一つではないので、子どものタイプに合わせていろんな方法を試していくのが良いと思います。例えば、競争意識の強い子には、ライバルを作ることやゲーム性を取り入れるのが良いですし、のんびりタイプの子には、スモールステップで少しずつ進める環境を用意するのが良いでしょう。私の場合、わが子にもっとも合っていたのは、自信を持たせることでした。日頃からポジティブな言葉がけを意識して、とにかくたくさん褒めてあげる。娘たちは褒められることで、かなりやる気を出していたように思います。
子どもが自らすすんで学ぼうとするとき、子どもは大きく伸び、能力の幅も広がります。「どうやって子どもをその気にさせるか」「どうしたら子どもが動き出すか」、親が知恵を絞りながら、あの手この手でいろいろ試してみること。前から引っ張ってみたり、後ろから押してみたり、横に並んで走ってみたり…。いろいろ楽しみながら工夫してみることです。
もちろん最初からすべてがうまくいくとは限りません。子どもは一人ひとりがまったく違いますし、日々かなりのスピードで成長しています。一か月前や一週間前にうまくいった方法が、今日は通用しないこともしょっちゅうあります。そのため、日頃から子どもの様子をよく観察し、わが子の「今ここ」を知ることが大切です。そのときの子どもの状態に合わせてバランスを取りながら、フィットする方法を見つけていく。うまくいかなかったら、別のやり方を試してみる。子育てはトライ&エラーの繰り返しです。