共に学び、子どもの世界を広げる親子関係の構築を

小学生・中学生は「勉強体質」づくりを心がけて

教員を長いことやってきて、何も言わなくても勉強をする子は日本に1割もいないんじゃないかなと思っています。私が33年間働いてきた西大和学園と灘校は、東京大学をはじめ全国の難関大学にたくさんの合格者を輩出している進学校ですが、それらの学校でもその程度です。でも、ある特性を持つ子の場合、今は勉強していなくても、そのうち体に染みついているその特性のおかげで勉強を始めるようになります。その特性とは、「勉強し続けられる体質」=「勉強体質」です。自分の子どもに「本当に賢く育ってほしい」「自分が好きな勉強を見つけていってほしい」と親が望む場合、英語に限らずこの体質づくりが肝心。特に小学生や中学生という時期はとても大事です。

方法の一つとして、親が子どもと一緒になってこの「勉強体質」を構築できるよう、考えたり行動したりするのがおススメです。親自身が新しいさまざまなことにチャレンジし、学びを面白がっている姿を見せる。単なるレジャーではなく、体験を増やせるような目的を持って旅行に行くのもいいでしょう。コロナ禍が落ち着いたら、海外旅行なんか最高でしょうね。

僕の家では、家族旅行は「下見」だと子どもたちに言っていました。映画も一緒に行きますし、美術館や博物館も、本当に色々なところに連れて行きましたね。そして、「今、面白い!と思うものばかりでもないだろう。でも、将来自分にとって最高に素敵な人ができて、もし気が向いたら今度はその人と一緒に来てみればいい。一回目よりもより広く、深く楽しめるから」と伝えてきました。〝未来のその時〟までは、ちょっとお父さんに付き合ってくれ、みたいな感じです。

人は知らないことに対して興味を持つことはありません。たとえ本人が詳しく覚えていなかったとしても、頭の片隅には残るんです。そこで交わされた何気ない家族との会話、食べたもの、感じた空気…何気ない一言が、ある日「あ、これ知っているぞ!」とざわざわ~っと蘇ってくる。それがその子の「勉強体質」の下地を作ります。そのオポチュニティ(好機)を与えてあげられるのは、やっぱり家族であり、家庭であると思うんですね。

「勉強体質」と「記憶体質」の両輪があれば、
「一生伸びる子」が育つ

もう一つ、「記憶体質」についても触れておきましょう。色々なことを自分で調べていくうちに、「あ、これは覚えておいた方が後で役に立ちそうだな」「知らなかった。この話は覚えておこう」と考えるのが「記憶体質」です。全てとは言いませんが、親がその姿勢で学んでいれば、子もかなりの確率でそうなっていきます。そして、今度はそれを「どの順番で、どの方法で学ぶか」さらには「どうそれを自分の武器に昇華しようか」という段階になってきて、初めて「学校」なり「スクール」なり「塾」なりが、最大限効果を発揮するようになります。だって、学校や塾はその道のプロであり、そこにおいて効率を追求してきた集団であるはずですから。

「勉強体質」と「記憶体質」。この二つがあれば、一生学び続けられる人間になります。

英語もしかり、他の教科もしかり、子どもたちの学力を伸ばすのは、やっぱり家庭での学習です。近年の新型コロナウイルス感染症の騒動で、多くの子どもたちの「学ぶ環境」は混乱しました。しかし、休校を経た灘校の生徒たちの模試の成績は、以前よりぐんと伸びました。学校で習った知識を自分の脳に刷り込み、繰り返し復習する時間ができたからでしょうね。子どもたちにとって一番大事なのは、この「学びの習慣」なのです。この習慣をしっかり構築した上で、英語にも、さまざまな学習にも取り組んでもらいたいですね。

2022年6月発行 キッズジャーナルvol.14 より

PROFILE
木村 達哉(作家/元 灘中学校・高等学校英語教師
西大和学園中学校・高等学校で10年間、灘中学校・高等学校で23年間の教壇生活を経て、現在は作家として活躍。全国の教育機関での講演を行うほか、高校生や社会人向けの勉強会を開催し、精力的に教育活動に取り組む。著書には『新ユメタン』シリーズ(アルク)や『新キムタツの東大英語リスニング』シリーズ(アルク)、『灘校と西大和学園で教え子500人以上を東大合格させたキムタツの「東大に入る子」が実践する勉強の真実』(KADOKAWA)など多数。

 

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