現代の子どもたちは、スマートフォンやタブレットによる動画視聴やゲームなど、遊びそのものが「平面的」になっていると言われます。
その一方、パズルやブロックなど「かたちあるもの」にたくさん触れて図形に慣れ親しむ経験は、古典的ではあるものの、子どもたちの能力を伸ばすのに変わらず有効な方法だとされています。図形をとおして、どのような力が身につくのでしょうか?
子どもたちは図形が苦手!?
最近、「図形が苦手」という子どもたちが増えているように感じます。
それはデータにも表れており、小学6年生・中学3年生を対象とした「令和5年度 全国学力・学習状況調査」では、出題された分野のうち、いずれも「図形」の正答率がもっとも低いという結果が出ています。
たとえば小学6年生で出題されたのは、「三角形の角度と面積」という基本的な内容を問う問題。にもかかわらず、平均正答率は50%を切っており、半数以上の子どもたちが正しく解答できていません。
「図形」は本来、ちょっとしたゲーム感覚で取り組めて、楽しさや面白さを感じながら学べる分野のはず。小学生のうちから苦手になってしまうのは、とてももったいないことだと思います。
パズル問題に夢中!“成長の芽〟がぐんぐん伸びる
私の教え子の中には、「図形が好き」「図形が楽しい」という子どもたちがたくさんいます。
それはやはり、幼い頃からパズルやブロック、折り紙や切り絵などの「かたち遊び」にたくさん触れ、生活の中で豊かな図形感覚を育んできた子に多いように思います。子どもたちの身の回りには、学力の土台となる力を育むための“学びの場〟がたくさんありますが、図形が好きな子たちを見ていると、保護者の方がそれらを上手く活用されているのを感じます。
また、さなるグループでは、算数の授業に『閃きの力(パズル道場プログラム)』というトレーニングを取り入れており、子どもたちはみんなこの時間が大好きです。週に1回、ペーパー教材や教具を使ったさまざまなパズル問題に挑戦しますが、その教室はいつも活気と緊張感にあふれています。
「こうかな?」「いやだめだな、こっちにしよう」「よし、この作戦でいこう!」…。
夢中で考えたり工夫したりしている子どもたちの姿からは、“成長の芽〟がぐんぐん伸びているのを感じます。
将来に生きる能力を伸ばす
こうしたパズルトレーニングは、たとえば算数の点数が急に伸びるなど、すぐに目に見える成果をもたらすものではありません。長い目で見て「子どもたちの将来に生きる能力」を伸ばしてくれるところにメリットがあります。例としていくつか紹介します。
論理的思考力
問題に粘り強く取り組むことで、「筋道を立てて考える力」が養われます。複雑な事象を整理して、物事をシンプルに考えられる力にもつながります。
問題解決力
パズルの全体像をイメージし、完成までのプロセスを考えることで、「想像する力(イメージ力)」が養われます。物事をさまざまな角度から見る習慣をつけることで、問題を発見して解決する能力が鍛えられます。
発想力
物事を新しく考え出したり、アイディアを思いついたりする力が養われます。これからの時代を生きる子どもたちに必要な、「持っている知識を組み合わせて活用できる能力やスキル」を磨く機会にもなります。
空間認識能力
三次元空間における認識力が高まると、地図を読むのが得意になる、絵や図を上手に描けるようになる、球技などのスポーツが得意になるなど、さまざまなアドバンテージを手にすることができると言われています。
自分で考え、答えを出せる人に
こうした能力は「見えない学力」と呼ばれ、低学年の時期はこの力の育成を積極的に行うべきだという考え方があります。
点数や成績などの「見える学力」だけにこだわると、教科書の内容を暗記したり、誰かに教えてもらうことに頼ったりするなど、子どもはどうしても受け身になりがちです。
「自分の頭で考え、答えを出し、行動し、学び続けるようになる」。そのような大人に成長するためにも、幼少期から図形やパズルにたくさん親しみ、「柔らかい頭脳」を育成することは、子どもにとって大きなメリットがあると言えるでしょう。
そして、こうした取り組みは、トレーニングだけでなく日常生活の中でも自然なかたちで実践することが可能です。暮らしの中にさまざまな遊びやアクションを取り入れて、ぜひ親子で楽しんでみてください。
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日常生活に取り入れたい遊びや習慣を紹介!
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