入試願書の性別欄廃止:進む教育現場のトランスジェンダー

教育

静岡県の公立高校入試、22年度願書から性別欄を廃止

2021年春、静岡県教育委員会は22年度実施の公立高校入試願書から、受験生の性別欄を廃止する考えを発表しました。(愛知県は既に撤廃済)

今年廃止を決めたのは、静岡県を含む5県。これで、東京を除く46の都道府県で廃止が決定されました。願書の性別欄を巡っては、「自覚する性と異なる性別を記入することで、子どもたちが心理的苦痛を強いられる」ことが問題視されてきました。

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社会全体で「性的少数者」への配慮が進んでいるニュースを見聞きすることが増えましたが、教育現場でもそうした動きがあるんですね。

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出生時の性別と、自認する性が異なる「トランスジェンダー」への理解・配慮が、社会全体へ広がりを見せています。全国で唯一、全日制普通科で男女別定員制を設けている東京都でも、段階的に撤廃が決定されています。今回の「公立高校入試願書の性別欄」を巡っては、2019年度の大阪・福岡を皮切りに一気に改革が進みました。

制服・校則への配慮も。親世代から大きな変化

トランスジェンダーへの配慮は、制服や校則にも広がっています。

浜松西高中等部では、2021年から高校と一緒に男女・夏冬の違いをなくし、年間を通じて生徒が主体的に制服を着用できる「完全選択制」をスタートさせました。ジャケット、スラックスやスカート、セーラー服などから自分で考えて装いを決められる、自由度の大きな制度です。その他、高校を中心に女子生徒のスラックスを導入する学校も増えています。

校則でも、男女を区別する表記を取りやめる動きも広がっています。かつては制服・頭髪・下着や靴、靴下の色などに細かく規定がある中学校が多く、例えば髪形などで「男子は左右非対称は不可。女子は肩にかかる場合は黒か紺色のゴムで縛る」など男女別の規定がありました。現在は教育委員会の指導により、「清潔で中学生らしい髪形」と改められるなど、トランスジェンダーだけでなく「多様性」を意識した改革が教育現場で進んでいます。

進むトランスジェンダーへの配慮。教育現場からの意識改革に期待

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機能面でも、心の発達の面でも、制服が選べるってありがたいですよね。
子どもたちの身近なところから取り組みが進むことで、社会全体の意識が変わりそうですね。

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はい。性別欄の廃止に関する議論は、子どもたちが受ける入試問題への出題や就職活動で使われる履歴書などにも広がっています。性差別の解消は社会全体で取り組むべき課題ですが、子どもたちの人格形成に大きく関わる教育の現場から改革を進める意義は大きいと思います。私たち大人も、意識のアップデートが必要ですね。

全国の入試を見てみると、持続可能な開発目標(SDGs)の広がりを受けて、近年では「ジェンダー平等を実現しよう」に絡めた問題を出題した学校もありました。

海外では、就職活動・採用選考の際の差別を防ごうと、性別記入や写真の添付を不要にした履歴書の提出を求める国もあります。日本でも性別欄撤廃を求める署名活動を経て、21年4月には、厚生労働省から性別欄をなくした履歴書の様式例がWEBに掲出されたり、各企業への「公正な採用選考」のお願いが通達されたりしています。現在、お店で販売されている履歴書も、性別記入欄のない履歴書に変わっていっています。

トランスジェンダーの場合、適合手術を受けて戸籍上の性別を変更する人もいますが、そもそも男女どちらかに性自認を定めない人もいて、企業や学校でも性別を気にせずに使用できるトイレを設けるなどの取り組みが広がっています。

まずは子どもたちと関わりの深い教育現場がフロントランナーとなることで、個々の多様性を認め、受け入れる社会づくりが進むことを、私たちも応援していきたいですね。

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