読解力とは何か
「読解力」とはどのような能力でしょうか。言葉通りに捉えれば、「文章を読んでその内容を理解する力」であるといえます。しかし、OECD(経済協力開発機構)が実施している「PISA(15歳児の学習到達度調査)」では次のように定義されており、もう少し広範な意味で解釈されているようです。
『自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考し、これに取り組む能力』
つまり、文章の内容を理解するに留まらず、その内容を理解した上で、自分の頭で考え、生活そのものに利用できる能力が「読解力」であると言えます。
日本の子どもたちの読解力は?
では、日本の子どもたちの読解力のレベルはどうなのでしょうか?
2018年のPISA調査結果では、読解力の国際順位が前回(2015年)から大きく下がり、15位でした。読解プロセス別ランキングで見ると、「理解する」は13位、「情報を探し出す」は18位、そして「評価し・熟考する」は19位という結果でした。
つまり、「文章を読み解く力はあるが、必要な情報を取り出して活用したり、自分の考えを述べたりする能力に課題がある」ということがわかります。
未来に向けて必要な力
21世紀を生きる子どもたちにとって、読解力を身につけることはとても大切です。なぜなら、その力を伸ばすことが「生きる力」を養うことになるからです。
例えば、生活の中におけるWEBの利用。私たちは日々、SNSやインターネットから大量の情報を見たり聞いたりします。ただそれらは、全てが正しい情報とは限らず、誤った情報や不確かな情報、偏った見解などが含まれている可能性があります。それらをすべて鵜呑みにするのではなく、「なぜなんだろう?」「これはどう考えたら良いのだろう?」と思考しながら読み解く力が必要です。
またその時に、いくつかの情報を組み合わせたり比較したりして解釈・判断する力も求められます。最近の学力テストや入試では、複数の資料を読み取り、そこから正しい事実や自分の見解を導き出すような問題が増えています。多角的なものの見方とバランス感覚。それらは、これからの社会を生きていくために必要な力だと言えるでしょう。
さらには、AI(人工知能)が進歩する未来にこそ、人間の読解力が必要だと言われています。ご存じのとおり、AIは大量のデータ処理やルールに沿った作業を行う能力が非常に高く、精確さとスピードでは人間よりはるかに優秀です。ただし、判断基準が明確でなかったり、その場の状況次第で結論が変わってきたりする業務では、AIにすべての判断を委ねるのは難しいとされています。最後に意思決定をするのは、やはり人間。だからこそ、情報を正しく読み取った上で判断したり行動したりする力、つまりAIに負けない「読解力」が「生きる力」となるのです。
読解力を身につけるには?
では、どうすれば子どもたちの読解力は身につくのでしょうか? ここでは、佐鳴予備校で導入している「読書の力」プログラムを参考に、いくつかご紹介します。
良書をたくさん読む
「読書」が読解力向上に有効なのは言うまでもありません。ただ、活字離れが進む現代、「どんな本を読めばいいかわからない」「本を読むきっかけがない」などの悩みもあるようです。その場合、背伸びして難しそうな本を選ぶ必要はありません。まずは興味のある本や趣味に関する本など、気軽に選んで手に取ってみるのが良いと思います。また、迷ったら古今東西の名作や子ども向けの人気シリーズなど「たくさんの人から評価されている本」もおすすめ。馴染みのない分野でも、その世界に触れることで興味関心が高まることもあります。
語彙を増やす
「知っている言葉」「使える言葉」を増やすことも大切です。例えば、「面白い」という言葉でも、「愉快」と「滑稽」では意味合いが全く違ってきます。このような些細なニュアンスを理解するには、たくさんの文章を読んで、言葉そのものが持つ意味を正しく理解する必要があります。ここでも読書が有効ですが、日常生活の中でも語彙力を鍛える機会はたくさんあります。例えば、家庭での会話の中で、文脈に合わせてさまざまな言葉を使ってみる(難しい言葉もあえて使うようにする)、親子でニュースを一緒に見たり新聞を読んだりするなど。日頃からたくさんの言葉に触れる環境を作ることで、子どもは場面に応じた語句の使い方を学び、その意味を定着させることができます。
精読を心がける
読解力は「本を一冊読めば身につく」ものではありません。ただ読むだけでなく、内容を理解し、自分で考えることができるようになるには、ある程度の時間がかかります。だからこそ、せっかく一冊の本を手にしたら、「じっくり読む」という精読を心がけたいものです。ネット社会の現代では、ついつい文章を「飛ばし読み」してしまいがち。子どもたちにその癖がついてしまうと、理解が浅くなったり、意味を誤って解釈してしまったりする可能性があります。子どもが本を読み終えたら、「どんな内容だったか」「どこが面白いと感じたか」などの感想を簡単に話させてみると、細部まで意識して読む習慣が身につきます。
子どもたちの読解力を伸ばす上で重要なのは、まずは「読書を楽しむ」ことです。一人ひとりの興味やレベルに合った本から始め、「面白い」「もっと読みたい」とワクワクできるようなきっかけを作ってあげたいですね。
Adviser
土方 友貴(さなる個別 教師)
【関連リンク】 佐鳴予備校の個別プログラム 「読書の力」
https://www.sanaru-net.com/kobetsu/chikara/reading/
「読書の力」は、良書をたくさん読むことで読書への意欲を向上させ、同時に国語力も高めるプログラムです。読書経験を積み上げることで、語彙力・理解力・表現力が自然に鍛えられ、長文を読み切る力、文章を通して内容を整理できる読解力が鍛えられます。