富士山の魅力は“登山”だけじゃない!
富士山の知られざる魅力に出会える『富士下山』の魅力を紹介します。
富士山の登山シーズンは、7月から9月上旬まで。それが終わると山頂への道は閉鎖されますが、五合目やその周辺の散策を楽しむ「富士下山」は、10月頃まで楽しめます。富士宮、御殿場、須走の主要3ルート周辺の樹林帯や、宝永山から下の山麓には魅力的なスポットが点在しており、秋になると、富士山の麓から中腹にかけての広範囲に色とりどりの紅葉が広がります。澄んだ空気の中で、雄大な富士山をバックに赤や黄金色に染まる景色を楽しむのもおススメ!
標高2,400mの富士宮口五合目から御殿場口新五合目までを下山するコースでは、自然の力が生み出した大迫力の噴火口を巡ることができ、火山としての富士山の魅力を思う存分体感できます。「宝永山」は、1707年の大噴火によって3つの噴火口ができた富士山最大の側火山。一番大きい宝永第一火口は、なんと最大直径が1.2kmにもなる巨大さ!およそ300年前、ここから大量のマグマが噴出していたと思うと、地球の持つ底知れぬ力を感じずにはいられません。
「富士下山」にはいくつかの選択肢がありますが、どのルートを選んでも美しい景色が広がります。例えば、御殿場ルートでは広大な砂地を歩くことができ、火山荒廃地に自然が回復していく様を手に取るように感じられます。また、吉田ルートでは、森林地帯を通り抜けるため、四季折々の植物や野生動物に出会うことができます。標高差が生み出す植生の違いも、富士山ならではの魅力。「富士下山」は、こうした植物たちの生きざまを観察するのに最適な歩き方です。
富士山は約26万年前に誕生し、何度も噴火を繰り返して現在の形になりました。下山しながら富士山の地形や岩石を観察することで、その成り立ちや自然の力を感じることができます。また、富士山は古くから信仰の対象とされており、下山ルートの途中には、昔の参拝者たちが通った道や神社の跡を見ることができます。歴史的背景を感じながら歩くことで、富士山がただの山ではなく、多くの人々にとって特別な意味を持つ場所であることを学べるでしょう。
(2024年11月発行 キッズジャーナル vol.19より)
PROFILE
岩崎仁(いわさき ひとし)
富士下山家 / 富士山ネイチャーツアーズ 代表
1974年山梨県生まれ、静岡県富士宮市在住。登るだけではない富士山の魅力と楽しみ方を発信する、富士下山ツアーのオリジネーター。2005年に「roots&fruitsNATURETOURS」を設立。2015年から「富士山ネイチャーツアーズ」代表として、富士山の知られざる魅力に出会う自然旅行をテーマに、富士山をメインフィールドにしたさまざまなエコツアーを展開。その功績が認められ、第4回ジャパン・ツーリズム・アワード『国連世界観光機関 倫理特別賞』など受賞多数。