自然に親しみ、自然を理解して、
自然のために行動する
──ツアーに参加された方々からは、「予想以上に素晴らしかった」という声が多く上がっているそうですね。ガイドとして歩きながら、どのようなお話をされるのでしょうか?
私たちが大切にしているのは、参加者の皆さんに「心から自然を楽しんでもらう」ことです。富士山の登山道には豊かな自然が広がっており、植物や鳥、石や岩などには、それぞれ物語があります。ガイドとして、それらについて自然科学の視点から解説し、不思議を解き明かし、秘められた問題点にも触れるなど、さまざまな発信をします。
例えば、富士山の地表や樹皮には「地衣類」という生物がたくさん見られます。これは藻類と菌類が共生している生き物ですが、皆さんはそれが生き物だと気付かずに、歩きながら踏んでしまうことがあります。でも、この「地衣類」は実はすごい生物で、起源は2億5000万年前にさかのぼり、地球の酸素濃度を高めるなど生態系の発展にとても重要な役割を果たしてきました。種類によっては、たった1センチ四方に広がるのに50年もかかることがあります。こうした話をすると、皆さん、その生き物への見方や接し方が一変するんですね。
実はこの「地衣類」は富士山だけでなく、家の周りの公園の木にも生息しています。
富士山という特別な場所で豊かな自然の中を歩きながら、偉大な生き物に思いを馳せる。そして、それが身近な場所にも生息していると知ることで、自然の現象を〝自分事〟として捉えられるようになる。ツアーに参加された方が、新しい気付きに出会い、自分の自然観を広げてくれると良いですね。
──富士山の自然について知ることが、自然保護への意識を高めることになる。そのお考えを、大切にされているそうですね。
はい。「富士下山」ツアーの原点は、自然に親しみ、自然を理解することで、「自然を守るために行動できる人」を増やすことです。
まずは、「自然を好きになる」ことが大切です。人が人を好きになるのと同じで、自然を好きになることは、人間と自然の間に特別な関係を築くことにつながります。
次に、「自然を知る・理解する」ことです。富士山を歩けば、誰しも「きれいだね」「楽しいね」という感想を持つと思いますが、それだけではもったいない。そこで私たちガイドの役割が重要になります。「富士山の自然の豊かさは、どのようなバランスで保たれているのか」「富士山の植物や石や鳥は、自然科学の視点から見たらどうなのか」。それらをわかりやすく解説し、単なる観光以上の気付きや学びを提供します。
自然を知るからこそ、自然を守るための行動ができます。ツアーに参加した皆さんが、富士山の自然への理解を深め、「自然をもっと大切にしよう」「みんなで守っていこう」という意識を持ち、行動を変えてくれることを願っています。