小学生時代は、「愛情を持って近くから見守る視点」と「客観的・俯瞰的な視点」。
常に「2つの視点」でお子さんに接しましょう。
保護者側の意識の持ち方や言動で、子どもの反応も変わっていくのですね。今後、家庭や学校外で子どもの「学び」に関わる機会はまだまだ増えると思いますが、保護者はどのように子どもと向き合ったら良いでしょうか。
「子どもとの接し方」は、いつの時代も本当に難しいですよね。難しいのは承知の上で、保護者の方にはぜひ、一番近いところで「愛情をたっぷり注いであげる」のと同時に、「客観的・俯瞰的に見る」という“2つの視点”でお子さんに接していただければと思います。
今の親御さんたちは、「親と子1対1、もしくは1対2」という非常に狭い関係性の中で常に「きちんと」「しっかり」やらせなくては、という緊張感を持って頑張ってらっしゃる方がとても多いんです。その近くて狭い範囲で、物事を完璧主義みたいに頑張ってしまうと、例えばそこまでやらなくても将来必ず身についたはずのことを、完全管理でやらせようとしたために反発心が大きくなり投げ出してしまうような形になったり、子どもの自信を失わせたり…。
でも本来、「自分の子ども」は「自分」とは別人格であって、何でも言うことを聞く「自分のモノ」ではありません。だからこそ、過干渉にならないように、常に少し離れた視点も必要なんですね。「何年か経てばみんなできるようになっている。いつかできるようになるから、うちの子も大丈夫」くらいの気持ちで、少し離れて接してあげられると良いですね。
それでも「〇〇しなさい!」「ダメじゃない!」と言いたくなったら…
常に「未来に希望を持たせる言い回し」への変換を。
「自分の子」しか見ていないからこそ、見えなくなってしまうこともある、ということですね。焦らず、子どものペースを認めて待つ、という保護者側の「心のゆとり」が必要なのかもしれません。
「褒めて・認めて・やる気を引き出す」保護者の姿勢は、令和の時代にも十分有効です。子どもというのは、どこでつまづくかわからない。学歴が高くても、素晴らしい職業に就いても、人間関係で行き詰まったり、難しい仕事を与えられて上手くいかなくなったりすることもあるかもしれない。そういう逆境の中でも、前向きに周りの人と共生しながら幸せに生きていける人になるためには、自分は何が「好き」で、何に夢中になれて、パワーが湧いてくるのか、そういう「内面から生じる力」を大切にしなければなりません。
家庭は、そんな「好き!」を全開にできる、お子さんたちの「安心・安全」の基地です。ついつい「頑張らなきゃダメじゃない」と言いがちですが、否定的な言葉を聞くと、子どもたちの「安心・安全」の気持ちはシュン… と小さくなってしまいます。そんなときは、「やってみて、もしこんな風になったらすごいよね」と言い換えてみましょう。同じことを言っても、未来に希望を持たせる言い回しがとても大切です。
子どもたちはまだまだ、いろいろなことが十分にできるわけではありません。失敗もたくさんします。でも、「失敗しても、お父さん・お母さんは僕を認めてくれる、愛してくれるんだ」という安心感があって、初めて困難にチャレンジできるんです。『キッズジャーナル』をお手に取られたご家庭のお子さんたち一人ひとりが持っている才能を開花させ、ご家族と共に楽しく笑顔で歩んで行けるよう、願っています。
2021年12月発行 キッズジャーナルvol.13 より
PROFILE
杉山 賢純(愛知県立旭丘高等学校 前校長・佐鳴予備校最高顧問)
東北大学卒。1984年より愛知県の理科(化学)の教員として勤務。2002年より愛知県教育委員会教職員課管理主事、主査、主任主査を歴任。県立起工業高校、高蔵寺高校、豊田西高校、旭丘高校の各校長として高校内での教育改革を遂行。日本繊維工業教育研究会会長、西三北地区校長会会長、名北地区校長会会長を歴任し、長年愛知県公立高等学校長会理事を務める。2018年から2021年3月末まで旭丘高校校長を経て、株式会社さなる(佐鳴予備校)に入社。最高顧問に就任。長年の教育現場での経験を生かし、公教育と民間教育との橋渡し役として、全国の生徒たちを真の学力向上・志望校合格へと導く。